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村上春樹長編小説「人称」まとめ

村上春樹さんの長編小説14作品がどの「人称」で書かれているか、まとめました。

村上春樹 長編小説 人称

「一人称」か「三人称」か

人称をめぐる冒険

村上小説の人称と言えば「僕」というイメージがありますが、実際のところどうなんだろう?

村上春樹 長編小説

そう思って、本棚から長編小説を引っ張り出して調べてつくったのが、以下のグラフィックです。

村上春樹 長編小説 人称

デビュー作『風の歌を聴け』から20年間、一人称時代が続いた後、『海辺のカフカ』で三人称を導入。そこからしばらく三人称の時代があって、直近の作品『騎士団長殺し』で一人称に回帰しています。

編集後記

「ふうん。で、これつくって、何がしたかったの?」

そう聞かれてしまいそうですが、「いやあ、純粋に気になっちゃってさ。深い目的はないんだよ」と答えるしかなさそうです。

それでも個人的には小さな気づきがあって、一人称の「僕」で書かれた『風の歌を聴け』から『スプートニクの恋人』までは何度も読み返すほどハマったのに対して、『海辺のカフカ』以降の作品は一度読んでおしまいになっていたのは、ちょっとした発見でした。

あと、たしか村上さんと翻訳家・柴田元幸さんとの共著『翻訳夜話』に人称に関する話があったなと思って、パラパラと見返すと、『ねじまき鳥クロニクル』で人称を「僕」にした理由に触れている箇所を見つけました。

『ねじまき鳥クロニクル』という本を書いたんですが、主人公は失業してるんです。その冒頭のシーンで、彼は昼食にスパゲッティを作っている。で、文芸評があって、失業者がスパゲッティを作っちゃいけないって批判された(笑)。僕は知らなかったんだけど、失業者はやっぱり失業者のイメージを守らなくちゃいけないんですね。「僕」という人称は一般的に失業者になじまないと思われるところがあるかもしれない。だからあえて「僕」にしたということはあります。

スパゲッティの話と人称の話、どちらも失業者のステレオタイプと“違う”イメージであえて描こうとしているのがポイント。

たとえば、失業者の境遇を歌った歌謡曲でも口ずさみながらインスタントラーメンをつくる主人公と、ロッシーニの『泥棒かささぎ』を軽やかに口笛で吹きながらスパゲッティをゆでる主人公がいたら、どちらの物語に入り込めるかという話でもあり、この批評を書いた人は前者だったのでしょう。

村上春樹 ねじまき鳥クロニクル 主人公

僕はここ10年くらい熱心な村上小説の読者ではなかったのですが、最近になって、『ねじまき鳥クロニクル』を読み返して、「このステレオタイプからズレた登場人物たちが魅力だよな〜」と思い出しました。合わせて、前に読んだ頃と比べて、多少はズレていることに対して寛容な社会になったかもしれないって思いました(多少は)。

追伸

偶然にもこの文章を書いているタイミングで、この夏に出る村上さんの短編集の題名が『一人称単数』だと知り、運命的なものを感じています😌


文・グラフィック
櫻田潤 さくらだじゅん

櫻田潤(さくらだ・じゅん)

インフォグラフィック・エディター
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2010年、インフォグラフィックの実践と普及を目的とする個人プロジェクト「ビジュアルシンキング」をスタート。

2014年にインフォグラフィック・エディターとして、NewsPicksに参画。スマートフォンに最適化したインフォグラフィック記事のフォーマットを開発。主にテクノロジー関連のインフォグラフィック記事の執筆・デザインを多数担当。

2018年より、コミュニティ『ビジュアルシンキング・ラボ』の運営を開始。2020年6月、「見て楽しむ」をコンセプトにしたカルチャーマガジン『Orwell(オーウェル)』をこっそりローンチ😏

著書に『たのしいインフォグラフィック入門』『図で考える。シンプルになる。』『たのしいスケッチノート』ほか。